【環境・SDGs】科学的根拠に基づいたエコフローリングとは?
2026.5.7
今まで「エコフローリング」というと間伐材や自然素材を用いたものがピックアップされてきました。
このような「製造工程」や「素材」に焦点を当てる評価方法がある一方で、最近の海外のトレンドでは製造だけでなく、その後のメンテナンスや廃棄も含めた「ライフサイクル」で評価をおこなう方向に向かっています。
本稿ではヨーロッパで普及しているEPDの定める指標に基づき、海外のデベロッパーやデザイナーが会議でも用いる、科学的に「エコなフローリング」の定義を解説していきます。
エコなフローリングとは?
エコな材質であることの定義づけには、環境への負荷が低いことが指標としてもちいられます。人間が加工をおこなっている製品の時点で、多かれ少なかれ「環境への負荷」は必ずかかるため、そのインパクトが少ないことが重要になるわけです。
このインパクトの算定がされるのは「製造」「原料」だけではありません。その後の「運搬」「施工」「使用」「メンテナンス」「廃棄」と、製造後の廃棄までの全てのライフサイクルが含まれて来るのです。
こうした煩雑な定義を明確にしている機関が存在します。EPD(Environmental Product Declaration)は、その建材が環境に良いかどうか、以下の製品ライフサイクルの合計インパクトを試算して判断します。

これらの工程の一つ一つのタイミングで、具体的にどのような指標を持って「環境に良い」と見なされるのでしょうか。説明をおこなっていきます。
1製造(原材料、輸送、製造)
製造の際の環境へのインパクトが評価項目となり、製造時の二酸化炭素排出量が主な算定内容です。原料の調達時、輸送時、生産時、といった製造の総工程で、工場の用いる水、エネルギー、電力、二酸化炭素排出量、など横断的に細かく調査されます。単に原材料の良しあしだけではなく、会社としてリサイクル可能なエネルギーを用いていると良い評価を得ることにもつながります。

この期間において、木質系のフローリングは他の材質のフローリングよりも「環境に優しい」という評価が出やすいと言えます。理由として「石油由来の原材料ではない」「炭素エネルギーを使用」「製造エネルギーが低い」というもので、逆に石油燃料を用いるPVCなどはインパクトが高く評価されがちです。
もっとも、木質フローリングの中でも接着剤を多く用いて多重構造になっている複合フローリングなどは単純な無垢フローリングよりは環境への負荷が高いと認識されがちです。
- 製造時の地球温暖化へのインパクトが高く評価される
- 一次エネルギー(石油・石炭)消費量が高いと環境インパクト増
- 水の消費量も評価対象
- 木材のように成長過程でCO2を吸収する素材の場合「インパクトがマイナス」と評価されることも
- 逆に製品自体に石油を用いる塩ビ系はインパクトが高く算出されがち
2施工
施工時の環境への負荷も評価基準となります。施工時にエネルギーを高く消費する(あるいは施工時に用いる素材が高エネルギーによって生成されている)場合、環境へのインパクト大と見なされます。
ここで評価ポイントが高いのが、ノリ・釘を用いずに施工可能な「クリック式」のフローリングです。逆に、ノリ・釘を用いる施工方法、下床の全面的な張替えを要するような複合フローリングは環境への負荷が高いと認識されます。
- 製造時同様、地球温暖化やエネルギー消費が目安に
- 接着剤の使用はインパクト大と見なされる
- 逆にクリック式の施工ではインパクト低
3使用
高耐久の床材は耐用年数が長いため、高く評価されます。逆に、製造時の環境へのインパクトが低くても、耐久性が低く何度も張替えなどを要する床材の基準は低くなりがちです。
例えば木質天然素材の建材はステージA(製造工程)の環境負荷は低くなりがちですが、このステージB(メンテナンス)での負荷が多いと考えられています。
この意味では、高耐久であることはそのままエコフローリングであるという考えにもつながります。
- ワックスや修理など手間が少ないと高評価
- 耐用年数が高いと高評価
4廃棄
製品ライフサイクルの最後を締めくくるのは「廃棄」です。いくら製造時の環境インパクトが低くても、廃棄時に莫大なエネルギーがかかってしまったらエコな素材と言えるのでしょうか?
リサイクルのしやすさは、本ステージにおける重要な評価項目です。そのためには解体がしやすい(施工の項目でみたクリック式のような)素材であること、同一の素材が用いられていること、などが評価対象となります。逆に接着剤でガチガチに固められて施工されていると、リサイクルが困難と言えるでしょう。
リサイクルが難しい場合、廃棄時のCO2の排出量などが鍵となります。オゾン層への影響なども考慮されるため、有害物質を含むような建材は大きな原点ポイントとなります。
総合評価
さて、こうした全ての指標を鑑みると、それぞれの製品ライフステージにおいて床材ごとのメリット・デメリットが見えてきます。製造時のパフォーマンスが優秀な木質床は、その後の施工やメンテナンスで低評価になります。逆に製造時の環境負荷が高いとされる塩ビ系は、施工やメンテナンスで強みを発揮します。ラミネートは全体的に環境への負荷は高評価ですが、製造時に接着剤を大量に用いるのでホルムアルデヒドの含有問題を生じることがあります。
※市場EPDを元にした参考補正値(比較用)
牛乳パックや哺乳瓶に用いられるPP・PEを原料とするオレフィン系フロアは最初から製ライフサイクルの最初から最後まで優秀な「エコフローリング」と言えるでしょう。可塑剤を含まず遺伝子や生殖機能への影響もないとされることから、ヨーロッパではエコ・健康素材の代名詞として急速に普及しています。
